○加美町水資源保全条例
平成26年12月15日
条例第22号
分水嶺として宮城県・山形県に広がる耕土と様々な命を潤す雄大な船形連峰をはじめとした山々のふもと、私たちは古くよりこの豊富な水資源が支える豊かな自然の恵みを享受しながら、日々の生活を営んできました。また、私たちの町は、清流が支える自然により、国の天然記念物魚取沼の鉄魚をはじめとする多様な動植物の故郷となっています。
しかし、文明・技術の発展による資源やエネルギーの大量消費、乱開発による森林破壊、あるいは自然・人的災害などにより、この豊な自然環境を脅かす深刻な影響が懸念されるようになってきました。この水資源が損なわれることは、私たちの町のみならず下流域の生活、ひいては生態系をも脅かすこととなります。このような中で、自然環境に悪影響を与える負荷行為を抑制し、健全な水環境を保全することが必要とされています。
私たちは、先人から受け継いできた生命の源ともいえるこの水資源を守り、将来の世代が変わらずに享受し続けられることを目的とした施策を総合的に推進させるため、ここにこの条例を制定します。
(目的)
第1条 この条例は、きれいな水を町民が享受する権利を守るため、水資源の保全に必要な施策を講じて水質の保全を図り、もって現在及び将来にわたり町民の生命及び健康を守ることを目的とする。
(町の責務)
第2条 町は、水源地域の保全に係る必要な施策を定め、これを実施しなければならない。
(町民の責務)
第3条 町民は、町が本条例に基づいて実施する施策に協力しなければならない。
(事業者の責務)
第4条 事業者(国、地方公共団体を含む。以下同じ。)は、その事業実施に当たり、水源地域の保全に必要な措置を講ずるとともに、町が本条例に基づいて実施する施策に協力しなければならない。
(水資源保全地域の指定)
第5条 町長は、水源を保全するため、水資源保全地域を指定することができる。
2 町長は、水資源保全地域を指定しようとするときは、あらかじめ20日以上の期間を定め、水資源保全地域を示す図書を縦覧に供しなければならない。
3 町長は、縦覧の場所及び前項に規定する期間を告示するものとする。
4 町長は、第2項に規定する縦覧期間経過後、加美町環境基本条例(平成17年加美町条例第2号)の規定に基づく加美町環境審議会(以下「審議会」という。)の意見を聴かなければならない。
5 町長は、第1項の規定により、水資源保全地域の指定をしたときは、その旨を直ちに告示するものとする。
6 水資源保全地域の指定は、前項の規定に基づく告示によってその効力を生ずる。
(利害関係者の意見陳述等)
第6条 事業者、土地の所有者等、水資源保全地域指定に関し利害関係を有する者(以下「利害関係者」という。)は、審議会において関係資料を提出し、意見を述べることができる。
2 審議会は、利害関係者が多数の場合は、意見陳述に代えて書面の提出を求めることができる。
2 水資源保全地域において、別表に定める事業を行おうとする事業者は、予め町長に対し、規則で定める図書を添付した許可申請書(以下「許可申請書」という。)を提出しなければならない。
4 町長は、第2項の規定による許可申請書を受理したときは、審議会の意見を聴き、当該事業実施の許可又は不許可を決定し、事業者に対し速やかに通知するものとする。
5 町長は、以下の基準を満たす事業でなければ、許可をしないものとする。
(1) 町民の健康及び生活環境上の支障をきたすおそれがないこと。
(2) 水源の水質の確保を阻害するおそれがないこと。
(3) 水資源保全地域の生物多様性に著しい影響を及ぼすおそれがないこと。
(4) 町民との協議のうえ同意を得ていること。
6 本条の規定は、事業を行う施設の構造若しくは規模又は事業の範囲を変更しようとするものについて準用する。
(事業者の意見陳述等)
第8条 前条の規定に基づき許可申請書を提出した事業者は、審議会において関係資料を提出し、意見を述べることができる。
2 審議会は、許可申請書を提出した事業者に対し、関係資料の提出及び意見を求めることができる。
2 町民は、許可申請書が公開された後、審議会に対し、関係資料を提出し、意見を述べることができる。
3 事業者は、前項に規定する町民の意見に関する審議会からの照会に応じなければならない。
(既設事業者の取扱い)
第10条 水資源保全地域の指定の日以前から当該地域内において別表に定める事業を行っている者(以下「既設事業者」という。)は、当該地域指定の効力が生じたときから60日以内に、町長に対し、規則で定める事項を届け出なければならない。
(事業終了の届出)
第11条 許可を受けた事業者及び既設事業者(以下「許可を受けた事業者等」という。)が指定地域内での事業を終了した場合は、速やかに町長に届け出なければならない。
(報告及び立入検査)
第12条 町長は、この条例の施行に必要な限度において、許可を受けた事業者等に対して、当該事業場の排出水等の水質検査の結果について、規則で定めるところにより報告を求め、又は町長の指定する者を施設に立ち入らせ、排出水等の検査をさせることができる。
2 前項の規定により立入検査をする者は、その身分を示す証明書を携帯し、許可を受けた事業者等に提示しなければならない。
(承継)
第13条 許可を受けた事業者等から、施設を譲り受け、借り受け、若しくは相続した者又はこれらの者と合併し存続する法人若しくは合併により設立した法人は、当該許可を受けた事業者等の地位を承継する。
2 前項の規定により地位を承継した者は、その承継があった日から30日以内に町長に届出をしなければならない。
(改善命令等)
第14条 町長は、第12条第1項の報告又は検査において、水源の水質を汚濁させ、又は汚濁させるおそれがあると認めたときは、当該事業者に対し期限を定めて施設の構造、使用方法及び汚水等の処理方法の改善を命じ、その施設の使用の一時停止を命ずることができる。
(勧告)
第15条 町長は、次のいずれかに該当すると認めるときは、その者に対し、期限を定めて必要な措置を講ずるよう勧告することができる。
(1) 第7条第4項による許可を受けずに事業を行う者
(2) 第10条による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
(中止命令等)
第16条 町長は、前条の勧告に従わずに事業を行う者に対し、当該事業の中止を命じることができる。
2 前項による中止命令と併せて又はこれに代えて、当該事業者に対し、相当の期間を定めて施設の撤去等の原状回復を命じ、若しくは原状回復が著しく困難である場合にこれに代わるべき必要な措置を取るべき旨を命じることができる。
(公表)
第18条 町長は、次の各号のいずれかに該当する者があるときは、その旨を公表することができる。
(1) 第7条第4項による許可を取らずに事業を行った者
(2) 第10条による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
(3) 第14条による改善命令等に従わない者
附則
この条例は、公布の日から施行する。
別表(第7条、第10条関係)
事業 |
1 廃棄物等(循環型社会形成推進基本法(平成12年法律第110号)第2条第2項に規定する「廃棄物等」並びに放射性廃棄物及び放射性物質に汚染された廃棄物等をいう。)の処理事業 |
2 採石業 |
3 畜産農業又はサービス業の用に供する施設であって、次に掲げるもの。 |
(1) 豚房施設(豚房の総面積が50平方メートル未満の事業場に係るものを除く。) |
(2) 牛房施設(牛房の総面積が200平方メートル未満の事業場に係るものを除く。) |
(3) 養鶏施設(鶏の羽数が2,000羽未満の事業場に係るものを除く。) |
4 食糧・飲料水製造業 |
5 生コンクリート製造業 |
6 砂利砕石業 |
7 ゴルフ場 |
8 し尿処理施設(建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第32条第1項の表に規定する算定方法により算定した処理対象人員が500人以下のし尿浄化槽を除く。) |
9 平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成23年法律第110号)第17条第1項の規定による指定に係る廃棄物の処分場の設置 |
10 上記以外で町長が審議会の意見を聞き、特に必要と認めたもの。 |