○加美町環境基本条例

平成17年2月22日

条例第2号

(前文)

平成15年4月1日、中新田町、小野田町、宮崎町が合併して加美町が誕生しました。

私たちの町は、美しく雄大な船形連峰のふもと、大崎耕土の水源地帯に位置し、古くから飲料水の供給地として、また漁業資源のふるさととしての役割を担ってきました。そして長い歴史の中で、きびしいながらも美しい環境に包まれたこの地を耕し、木を植え、家を建て、豊かな自然の恵みを受けながら、この大地をいつくしみ生活を営んできました。

しかし近年は、経済社会の発展とともに、より一層の豊かさや利便性を求め、資源やエネルギーの大量消費、不用物の大量廃棄が繰り返されるようになりました。その結果、環境問題は、身近な生活の問題から、地球の温暖化、オゾン層の破壊、海洋汚染などの地球的規模にまで拡大し、生物の生存基盤を脅かす深刻な影響が心配されるようにさえなってきました。

21世紀は環境の世紀と言われています。それは、いま、環境への行動を起こさなければ取り返しがつかなくなってしまうという警鐘にほかなりません。

私たちの町には、広大で緑豊かな森林と、国内でもめずらしいミズバショウが群生する湿原地や、国の天然記念物魚取沼の鉄魚など、誇るべき自然の宝庫があります。そして誇るべき宝庫とは守るべき宝庫ということでもあります。そう考えるとき、加美町の環境を保全するということは、地球という人類最大の財産に対する責任にもつながっていきます。

私たちは、先人から受け継いだ歴史や文化を後世に引き継ぐように、豊かな美しい自然環境についても、これを破壊することなく、さらにより良い環境を創造して未来の子どもたちにつないでいくため、ここにこの条例を制定します。

目次

第1章 総則(第1条―第7条)

第2章 環境の保全と創造に関する基本的な施策等(第8条―第22条)

第3章 環境審議会(第23条)

第4章 補則(第24条)

附則

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、環境を守りながら、未来の環境のあるべき姿についての基本的な考え方を定め、町、町民、事業者及び滞在者の役割を明らかにするものです。そしてそのための施策を総合的かつ計画的に進め、現在と未来の町民が安全で健康的、文化的な生活を営むことができる良好な環境を創っていくことを目的とします。

(定義)

第2条 この条例における用語の意義は、次に掲げるとおりとします。

(1) 環境の保全と創造

町の美しい森やきれいな川を守り、上流の人々も下流の人々も、ともに健康で文化的な暮らしができるような自然環境を保ちながら、未来に向けて、より良い自然環境を創っていくことをいいます。

(2) 環境への負荷

私たちの日々の活動が環境に与える影響の中で、良好な環境を保っていく上でその支障の原因になっているものや、そのおそれのあるものをいいます。

(3) 公害

私たちの暮らしや事業活動などによって発生する大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下、悪臭等により、人の健康や生活環境に被害が生じることをいいます。

(4) 循環型社会

ゴミを少なくし、またゴミの処分についても分別処理を徹底して、資源の再使用やリサイクルを行い、資源として循環利用することにより、天然資源の消費を節約し、自然環境を大切にする社会をいいます。

(5) 地球環境の保全

私たち人類の営みが原因となって起こる地球温暖化やオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少など、地球環境に及ぼす悪い影響から環境を守り、環境を大切にする活動を通して人類の福祉に貢献することをいいます。

(基本的な考え方)

第3条 私たちは、加美町の良好な環境の保全と創造を実現するために、次のことを基本的な考え方とします。

(1) 私たちは、すべての町民が加美町の豊かで恵まれた自然環境を大切にしながら、その自然環境が、将来にわたって損なわれることなく引き継がれるように努めていきます。

(2) 多様な生物が生息している加美町の豊かな自然環境を守り、そのための活動がさらに広がりを持つように努め、人間と自然が共生する社会の実現をめざしていきます。

(3) 永い年月をかけ、先人から継承してきた貴重な歴史的、文化的遺産及び景観を保護し、その中から人と自然が調和することの大切さを学び、それを発展させることを目的とします。

(4) 私たちの暮らしや事業活動による環境への悪い影響を少なくするよう努め、さらにより良い環境を創っていくような循環型社会を築くことをめざしていきます。

(5) 地球環境を守っていくことは人類共通の願いです。すべての人々がこれを自らの課題として考え、あらゆる事業活動や日常生活において積極的に取り組むよう努めていきます。

(6) 町が行う様々な施策は、環境の保全を優先して取り組むことを基本として、この考え方を尊重して行っていきます。

(町の役割)

第4条 町は、第3条に定める基本的な考え方により環境を守り、さらに未来の理想的な環境を創造していくため、基本的かつ総合的な施策を策定し、これを実施する役割を担います。そのために、町は、町民や事業者及び滞在者の自主的な環境の保全と創造への取組みを支援する責任を負っています。

(町民の役割)

第5条 町民は、基本的な考え方にしたがい、日常生活の中で地域の人たちと協力しながら、環境への影響を少なくするように努め、循環型社会の実現に積極的に取り組んでいきます。また、町が実施する環境の保全及び創造に関する施策に対しても協力する役割を担っています。

(事業者の役割)

第6条 事業者は、基本的な考え方にしたがい、その事業活動を行う場合には、自らの責任において、公害を防止し、自然環境を守るために必要な対策をとる義務があります。そのために、事業者が行う生産活動や販売などの事業は、再生可能な資源や環境への影響の少ない原材料を使うとともに、廃棄物そのものを減らしていくよう努めなければなりません。また、町が実施する環境の保全と創造に関する施策に協力する役割を担っています。

(滞在者の役割)

第7条 通勤、通学または旅行などで本町に滞在する人々も、第5条に定める町民の役割に準じて良好な環境の保全と創造に努める役割を担っています。

第2章 環境の保全と創造に関する基本的な施策等

(施策の基本方針)

第8条 町は美しく豊かな自然環境の象徴として、町花にミズバショウ、町木にブナ、町鳥にキジ、町魚にアユを選定しています。そこで、加美町の環境の保全と創造に関する施策は、基本的な考え方にしたがい、次の事項を基本方針として、常に各種施策と連携を図りながら計画的に行っていきます。

(1) 大気、水、土壌等を良好な状態に保つとともに、地域の特性を活かした景観づくり等により、快適な生活空間を創造すること。

(2) 野生生物が生息する豊かな生態系の保持や、河川、森林等の自然環境の適正な保全をとおして、人と自然との豊かなふれあいを保つこと。

(3) ゴミの量を減らし、資源の再使用やリサイクルなどの省資源と、エネルギーの効率的利用などの省エネルギーを徹底することにより、天然資源の消費を抑えること。

(4) 町、町民、事業者及び滞在者すべての人が、事業活動や日常生活において環境に十分に配慮するなど、自主的かつ積極的に行動することにより、環境への影響を少なくすること。

(5) 地球温暖化の防止、オゾン層の保護等に積極的に取り組むことにより、地球環境を良好な状態に保つこと。

(環境基本計画の策定)

第9条 町長は、環境の保全と創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、加美町環境基本計画(以下「環境基本計画」といいます。)を策定し、具体的な行動の方針を示さなければなりません。

2 環境基本計画には、環境の保全と創造に関する目標、施策の方向と指針、その他の重要事項を定めるものとします。

3 町長は、環境基本計画を策定するときは、町民、事業者及び第23条に定める加美町環境審議会の意見を聴かなければなりません。

4 町長は、環境基本計画を策定したときは、速やかにこれを公表しなければなりません。

5 前2項の規定は、環境基本計画を見直し、変更する場合について準用します。

(環境基本計画の順守)

第10条 町は、環境に影響を及ぼすおそれのある事業を実施する場合には、環境基本計画の考え方にそって、環境への負荷が抑えられるよう十分に配慮しなければなりません。

(報告書の公表)

第11条 町長は、町の環境の状況や、環境の保全と創造に関する施策の進み具合について年次報告書を作成し、これを公表しなければなりません。

(事業者への指導等)

第12条 事業者が環境に影響を及ぼすおそれのある事業を行う場合、あらかじめ環境への影響について事業者自らが調査し、予測や評価を行うこととし、町はその結果に基づき、環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるものとします。また、必要に応じて事業者に対して指導や助言を行います。

(規制の実施)

第13条 町は、環境の保全と創造を推進する上での障害を除くため、必要な規制を行うものとします。

(資源の循環的利用等の促進)

第14条 町は、環境への負荷を低減するため、町民や事業者による廃棄物の減量、資源の循環的利用、エネルギーの効率的利用等が促進されるよう必要な対策をとるものとします。

(事業者との協定の締結)

第15条 町は、良好な環境の保全と創造に関し、必要に応じて事業者と環境への負荷を抑えるための協定を締結することができます。

(環境整備事業の推進)

第16条 町は、下水道や廃棄物の処理施設をはじめ、環境の保全を目的とした施設の整備に取り組むほか、公園、緑地等の整備など自然環境の整備に取り組むものとします。また、多様な野生生物が生息できる環境の確保や、適正な水循環の形成など、環境の保全と創造のための事業に取り組むものとします。

(監視体制の整備)

第17条 町は、良好な環境の保全と創造に関する施策を実施するため、環境の現況把握に必要な監視、測定、検査の体制の整備に努めるものとします。

(環境教育と環境学習の推進)

第18条 町は、町民及び事業者が環境の保全と創造に関する理解を深められるように、教育と学習の推進について必要な措置を講ずるものとします。また、子どもたちに対する環境教育も進めます。

(住民活動等への支援)

第19条 町は、町民、事業者及び民間団体が行う環境の保全と創造のための取組みに必要な支援を行うものとします。

(情報の収集等)

第20条 町は、環境の保全と創造に関する必要な情報の収集に努め、これを適切に提供するものとします。

(国、県及び他の地方公共団体との協力)

第21条 町は、良好な環境の保全と創造に関し、広域的な取組みを必要とする施策について、国、県及び他の地方公共団体と協力して、その推進に努めるものとします。

(地球環境保全に関する国際協力)

第22条 町は、国や県、その他の地方公共団体及び民間団体等と連携し、地球環境保全に関する国際協力の推進に努めるものとします。

第3章 環境審議会

(環境審議会)

第23条 環境基本法(平成5年法律第91号)第44条の規定に基づき、町の区域における環境の保全と創造に関し基本的事項を調査審議するため、加美町環境審議会(以下「審議会」といいます。)を置きます。

2 審議会は、町長の諮問に応じて、次に掲げる事項を調査審議し、意見を述べることができます。

(1) 環境基本計画の策定及び変更に関すること。

(2) 前号に掲げるもののほか、環境の保全と創造に関する基本的事項及び重要事項

(3) 前2号に掲げるもののほか、他の条例の規定によりその権限に属する事項

3 審議会は、委員15人以内をもって組織します。

4 委員は次に掲げる者のうちから、町長が委嘱します。

(1) 関係団体を代表する者

(2) 関係行政機関の職員

(3) 識見を有する者

(4) 環境保全に関心の高い者

5 委員の任期は、2年とします。ただし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とします。

6 委員は、再任することができます。

第4章 補則

(委任)

第24条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定めます。

この条例は、平成17年4月1日から施行します。

加美町環境基本条例

平成17年2月22日 条例第2号

(平成17年4月1日施行)